名古屋直葬

葬式はなくなる? 通夜なし、式なしの「直葬」選ぶ時代に〈週刊朝日〉
2/11(月) 8:00配信

 

 

(写真=ユニクエスト提供)
「こういう弔いの形もありなんだなと思いました」

 

 東京都在住の田中一也さん(仮名・59歳)。おととし、11歳年上のいとこをがんで亡くした際に、通夜や葬儀・告別式をしない“お別れ”を経験した。あっさりした性格だったいとこは生前から、「死んだときは、一切何もしなくていい」と意思表示していた。

 

【図表で見る】葬儀にかかる費用の平均額、「直葬」の流れはこちら
 都内の病院で田中さんや家族がいとこをみとった翌日、遺体は病院からいとこが住んでいた千葉市の火葬場へ直行。田中さんを含む近親者7人が火葬場に集まり、火葬を終えた後、近くの葬祭会館で軽く食事をして解散した。ものの1時間半で全てが終わった。

 

 九州出身の田中さんにとって葬儀といえば、通夜から多くの親戚や知人が集まって、1泊2日で行うイメージ。だからいとこの弔い方には驚いたという。

 

「読経も戒名もなし。すしは“竹”。ビール中瓶1本でお別れだった。その後、出勤できたぐらいあっさりとしていた」

 

 一抹の寂しさはあったものの、いとこの闘病生活は1年強におよび、心の準備はできていた。近親者でみとったので、故人と向き合えたという感覚もあった。

 

「これぐらいシンプルでいいのかもしれない。(通夜、葬儀・告別式をやる一般的な)葬儀で若い僧侶の説法に感動することもないし、通夜の食事もおいしいわけではないし。僕が死んだときも直葬にしてもらおうかと思うこともあります」(田中さん)

 

 形式的な儀式を極力省いた葬儀のかたち「直葬」がいま、都市部を中心に増えている。直葬とは、故人が亡くなった後、安置所か自宅に遺体を運んで安置し、その後、直接火葬場に移し、荼毘に付すという方法。近親者のみで行う。会葬者を呼んで通夜や告別式を営み、それから火葬する一般的な葬式に比べて、お金もかからない。

 

「ここ15年ほどで“葬儀はシンプルにしたい”という明確なポリシーを持った人が増加傾向にあります」

 

 こう話すのは、終活や葬式の相談・施行などを行う「葬儀を考えるNPO東京」代表の高橋進さんだ。かつて直葬は、故人が身寄りのない人や困窮者の場合に、自治体が葬儀費用を賄って行われる方法だった。

「今は、故人の遺志や家族の意向で選ぶ傾向にあります。中には菩提寺があっても直葬を選ぶ人もいるほど。それだけ従来の葬儀のあり方に疑問を持つ人が増えている証しでしょう」(高橋さん)

 

『葬式は、要らない』などの著書で知られる宗教学者の島田裕巳さんは言う。

 

「直葬が広がる背景には、死んだ人の扱いはなるべく簡単に済ませるべきという考え方が強まっていることもあります。血縁意識の低下から、“絶対に葬儀に呼ばなくてはいけない人”という存在もなくなってきている。都会のみならず、地方の葬儀も簡素化が進んでいる実態を見れば、そんなに遠くない未来に葬式そのものが消滅する時代が来るかもしれません」

 

 これまで累計15万件を超える葬儀を担当し、全国で葬儀ブランド「小さなお葬式」を展開するユニクエストによれば、現在、直葬(プラン名「小さな火葬式」)を選ぶ人が4割であるのに対し、「通夜、告別式ともに実施」を選ぶ人が3割、「告別式のみ実施」を選ぶ人が3割と、すでに同社では直葬が主流だ。

 

「喪主として一度大掛かりな一般葬を経験して、それを疑問に感じたことから、直葬を選ぶケースが増えています。大きな葬式だと会葬者の対応に追われ、ゆっくり故人と向き合う時間もなく、本当にこれで良かったのかと後悔が残ることもあるそうです。そうした方は、次に近親者が亡くなったときには、直葬などシンプルな葬儀を選ばれることが少なくありません」(ユニクエスト広報担当者)

 

 多くの会葬者を招いてその対応に追われる一般葬と比べて、故人とゆっくり向き合う時間を作ることができるのもメリットなのだ。また、葬儀費用を大幅に抑えられることも利点の一つ。一般葬の場合、平均額は約178万円。一方、直葬は平均15万〜30万円と、6分の1以下に抑えることができる。通夜の飲食費や斎場の式場料、祭壇費用などがかからないためだ。

 

「通夜の飲食もそれを楽しめるわけではないし、香典返しも果たして本当に必要なのかと、疑問に感じる人が増えるのも当然の流れです」

では、直葬を選びたい場合、具体的にどうすればいいのか。火葬許可証の申請など役所で行う死後の手続きは遺族がやることも可能だが、遺体の搬送などは荷が重い。儀式を省いたとしても葬儀会社などプロに頼むのが一般的だ。

 

「棺など必要なものも個別に手配すると手間がかかり、費用も高くつくことが多いので、葬儀社に頼んだほうが安心。悲しみの中、作業に追われるより、故人と向き合う時間を大切にしたほうがいい」(高橋さん)

 

 直葬を希望する場合、最低限必要な次のような物品やサービスがセットになった一番シンプルなプランを選べばよい。遺体の安置場所を確保し、病院や施設など亡くなった場所から、故人の遺体を寝台車にのせ、自宅や一時的な安置場所に搬送する。遺体を棺に納め、安置する。法律で定められた時間の死後24時間以上経過してから、火葬場の予約時間に合わせ、霊柩車で火葬場へ出棺する。もちろん、物も用意してくれる。遺体を入れる棺、棺用布団、故人に着せる仏衣一式、遺体保冷のためのドライアイス、枕飾り一式、骨壺、そして遺体をのせて移動する寝台車や霊柩車だ。(本誌・松岡かすみ)

住職が「葬儀をやり直せ」と激怒 「直葬」で増える問題とは

 

 

2017.8.24 11:30週刊朝日

 

 

 

 

墓や葬儀にかかる総額(週刊朝日 2017年9月1日号より)

 

 

 最近は葬儀をせずに、火葬だけ行う「直葬」が増えている。日本エンディングサポート協会理事長の佐々木悦子さんのところに相談に訪れた都内の寺の檀家の話だ。火葬だけ済ませ、遺骨を持って、お寺に行くと、「なぜオレを呼ばなかったのか。葬儀をやり直せ」となった。「じゃあ、出ます」と言うと、「離檀料を200万円払え」となってしまった。最終的に請求は取り下げられたが、「火葬式の前にお寺に行き、こういう事情で費用が捻出できないので、と一言住職に声をかけていれば良かったと思います。それだけで、お寺の対応は違っていたでしょう」と佐々木さんは話す。もめてしまったら、「仏教情報センターに相談するのも一つの方法」と教えてくれた。

 

 寺はべらぼうに高い金額を請求する、と安易に考えないほうがいい。朝に晩にお経をあげ、檀家のためにやってきたことが突然裏切られたときのやるせなさ。だから、「離檀料」という形でしか抵抗できないのかもしれない。

 

「お寺の立場からすると、今まで世話をしてきたという感覚がある。亡くなったときの魂を赤ん坊とすると、お寺は、赤ちゃんのときからずっと『育ててきた』という思いがあるのではないでしょうか」(佐々木さん)

 

 都市部では宗教離れも進む。

 

「地方と都市部では、感覚が違いすぎる」(同)。寺と檀家の間にも思いの差が出てきてしまう。心穏やかに、気持ちよく墓じまいを行うために、業者に頼むのも手だ。墓の移転実績が8千件以上というメモリアルアートの大野屋(東京都新宿区)は、3年前に「お墓の引越しおまかせサービス」を開始。高齢で運転ができないなどの理由から要望が高かった「遺骨の移動」作業も要望にあわせて代行する。

 

 墓石を撤去すれば、出てくるのは「遺骨」だ。さあ、これをどうするか。選択肢の一つが「海洋散骨」。海が好きな人が「子どもたちに海を見るたび思い出してほしい」と依頼するケースもあれば、墓以外の選択肢がこれしかなかったから、と選ぶ人もいる。

 

「ハウスボートクラブ」(東京都江東区)は、合同乗船散骨や、散骨を行った海域へお参りに行くメモリアルクルーズなどを企画、販売している。海にゆかりのある故人にとっては、最高の人生の終わり方だろう。しかし遺族が心を痛めるケースもある。というのも故人が海のどこに眠っているのか特定しにくい上に「会いに」行きにくい。そのため、「くれぐれもお骨を全部散骨しないように」と、高齢者の生活問題や葬送問題を研究する第一生命経済研究所の主席研究員・小谷みどりさんは助言する。

 

『これからの死に方』の著者で、生命倫理研究者のぬで島次郎さんはこう話す。

 

「業者に骨を送って撒いてもらうというのは、弔いにならず遺族の心にもしこりを残してしまう恐れがあるので、できれば遺族が自分で遺骨を細かく砕き粉状にして、溶ける繊維の袋に入れ、ゴミを増やさぬよう最小限の花と一緒に、自らの手で撒くのが理想です。業者任せの散骨は、単なる廃棄物処理になってしまうのでは、と私は恐れます」

 

「市民葬儀相談センター」によると、散骨を嫌がる家族も多く、代わりに樹木葬が増えてきたという。中でも「ガーデニング型プレミアム樹木葬フラワージュ」が人気だ。琉球ガラスの骨壺に入れて花壇の下に埋葬する。フラワージュを販売する「松戸家」(東京都小平市)によれば2年前に販売を開始し、全体で1千霊位以上受注した。ペットと入ることもできる。平均価格は25万〜40万円。最近は「夫と同じ墓に入りたくないから」と申し込む人もいるという。

 

墓石を自宅に設置する「自宅墓」もある。「かねみつ石匠」(岡山県笠岡市)の代表は自身が父と母を送った後に、「近くにいてほしいから」と骨壺と墓石が合体した商品を開発。人気は32×32×39センチサイズで、高さ18センチの骨壺が入る。仏壇とセット(税込み42万6千円)でも販売している。自宅墓は、リビングルームなどどこにでも置けるので、故人をいつも近くに感じられる。ただ、自宅の庭に設置となると、墓地埋葬法に抵触する。「墓石を自宅の庭に置く分には問題ないが、そこに遺骨が入っていればNG。埋葬はできないのです」(厚労省担当者)。つまり遺骨が入った「自宅墓」は庭には置けない。

 

 実施回数はそう多くないが、偏西風に乗って世界を何周もする「バルーン宇宙葬」がある。2〜2.5メートルの巨大な風船に遺灰を詰め、地上35キロメートル付近の成層圏で拡散し、自動的に散骨させる。空中を漂い、自然に返るイメージだ。「バルーン工房」(本部・宇都宮市)によると、6年間で200件ほど実施し、生前予約者は80人ほど。

 

 墓じまいした女性が選んだ手元供養のダイヤモンドは遺骨の中に含まれる炭素を取り出して作る合成のもので、遺骨を全部使う。墓を持たずに、遺骨の置き場に困っている人の需要に合う。


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